サンデーマーケットで軽く食べた後、僕らはメジャーリーグ観戦にセーフコ・フィールドへ向かった。
さっきのクラムチャウダーの件があるからか、息子はあんまり話しかけてこない。
怒りを抑えてるつもりでも、顔に出てしまってるのかな。
いかんいかん。
普通にしなくては。
朝はどんよりと曇っていたシアトルも、お昼が近づくにつれて晴れてきた。
球場に着いたら、そりゃもう野球観戦するには絶好の天気!
何かテンション上がってきたぞ!
…が、息子のテンションは相変わらず超低空飛行。
昨夜から怒られ続きなことが効いてるのか、元々野球に興味がないからなのか。
そもそも、今まで息子からサッカーやバスケの話は聞いたことあっても、野球の話題は一度も聞いたことがない。
でも、同行している他のパパやお子さんたちは野球好きな人が多いし、何より本場のメジャーの球場の雰囲気に触れれば、野球に興味なくても何か感じるものがあるはず!
いや、あってほしい、頼むから!
…少なくとも、他の楽しんでる子たちのテンション下げるような行動はしないでね。
スタジアムの壁には選手の写真や絵がたくさん描かれている。
いくら野球選手に詳しくない僕でも、イチローや岩隈は知ってる。
ちなみに、イチローを知ってた息子は岩隈のことは知らなかった。
頑張れ、岩隈!
球場に入った僕らを出迎えてくれたのは、昨夜お世話になったシアトル・神戸姉妹都市協会の人たちだった!
こんなに何から何までお世話になってしまって、本当に申し訳ないです。
案内されたのは、とても景色のいいスタジアムの一角。
ここで昼食をとってから、試合を観戦するようだ。
何か特徴的な建物だな、と思っていたらスターバックスの本社だった(赤丸で囲った建物)。
ちなみに違う場所からはAmazonの旧社屋も見えた。
「何か病院みたいな外観だな」と思ったら、以前は本当に病院だったらしい。
病院が抜けてAmazonがそこを借り、しばらくしてAmazonが自社ビルを建設してそっちに移動。
また病院が戻ってきて、現在は再び病院となっているそうだ。
近くにはキッズたちがバッティングを楽しめるコーナーもある。
野球のルールを知らない息子も、「ボールを投げる」「バットで打つ」くらいは知ってるし、こういうのはチャレンジしてみたくなる性分だ。
「やってみる?」と聞いたけど、アメリカのキッズがたくさんいるからか、遠慮してる。
やっぱり元気ないのかな、と思ったらお代わり自由のミートボールとポテサラ、ポテチをたくさんお代わりして完食した。
体調に特に問題はないようで一安心。
そうこうしてるうちに、球場から歓声が聞こえ始めた!
始球式は神戸市の副市長が行うらしい。
これは急いで席に向かわなくては!
無事に着席!
そして、始球式が終わって、アメリカ国歌の斉唱が行われた。
全員起立でものすごく厳かな雰囲気。
身体が痺れる。
実際の雰囲気を少しでも感じてみたい人はこれをどうぞ。
いいなぁ。
テレビとかで観たことはあるけれど、実際に生でこの空気を感じることができる日が来るとは思っていなかった。
息子をちらりと見ると、神妙な顔をしている。
何を感じているのだろう…。
そして、ゲーム開始!
今日のゲームは地元マリナーズと、ニューヨーク・メッツ!
本場のメジャーを生で観戦できる機会なんて、この先あるか分からないぞ!
パパも息子と一緒に観られて感無量だ!
…って、息子を見ると何だか下を向いている。
指先をいじったり、うつむいたり…。
おい… 野球に興味なくても、せめて目の前を観たらどうだ…?
「ワァーーーーー!!!!!」
歓声が上がる。
マリナーズのホームランだ!!
1回からいきなりホームラン!!
周囲は大歓声、花火も上がってる!!
今日のゲームはツイてるぞ!!
さすがにこれは息子も何か感じたんじゃないか??
息子「…(ボーっとしている)」
僕「…(イライライラ)」
「オォーーーーー!!!!!」
2発目のホームラン!!
凄い!!
さらに上がる歓声、鳴り止まぬ花火!!
息子「…(下を向いている)」
私「…ちょっとこっち来なさい」
開始早々だし、面白くなりそうな展開だったけど、我慢できず。
球場の端っこの、人があまり居ない階段まで息子を連れていく。
僕「体調が悪いのか?」
息子「ううん」
僕「つまんないの?興味ない?」
息子「そうじゃない」
僕「何が不満なの?昨日お話したこと忘れた?アメリカまで何しに来たの?楽しめないなら帰る?」
息子「…嫌だ」
僕「じゃあ何で下向いたり、自分の指をいじったりしているの?野球を観に来たんだよね?家でゲームやってた方が楽しい?」
息子「…(黙ってうつむく)」
興味がないものに対して「もっと興味を持ちなさい」と言うつもりはないし、言っても仕方ない。
7歳の子に「ほら、テンション上げていけよ!」と言っても無理だろう。
でも、こうもあからさまにつまらない顔をされると、一体何のためにこの子と一緒にアメリカまで来たのかと心底ガッカリしてしまう。
このイベントを企画してくれたFJKの方々に申し訳ないし、同行している他のパパたちのテンションにも水を差してしまうんじゃないか…?
親の気持ちとして、子供には小さいうちから色々な経験をさせてやりたいと思ってアメリカまで一緒に来たけど、それを吸収する能力が当の子どもになかったらどうしようもないのかな…。
昨夜のパレードに続いてこれでは、もうこの子を感動させることは難しいんじゃないだろうか。
もしかして、わざわざ外に連れ出さなくても、ゲームでもして自分の世界に没頭している方が、この子にとっては幸せなのでは…?
大歓声のセーフコ・フィールドの隅っこの階段の踊り場で、僕はそんなことを1人で考え続けていた。
しかし、考えても考えても、どうすればいいか答えは出てこない。
どうしよう、まだ3日目だぞ…?
そして、追い詰められた僕は、とうとう日本にいる妻にその場で電話をかけるという行動に出てしまう…。
続きます。