毎週水曜日。
僕の滞在している語学学校からトライシクルで10分ほどのところで、マラタパイという名のローカルマーケットが開催されている。
週に一度のマーケットなのだが、これが何というか、すごい。
色んな意味ですごい。
日本ではもう、田舎に行ってもないんじゃないかな、こういうのは。
今回はそんなマラタパイ・マーケットについて書いてみる。
学校からトライシクルに乗って、ナショナル・ハイウェイを走ること10分。
急に人だかりが見えてきた。
ここがマラタパイ・マーケット。
老若男女、人人人。
とにかく多くの人でごった返している。
トライシクルを降りてすぐの場所では、闘鶏らしきことをしていた。
そうか、この辺はそういう文化もあるって言っていたな。
日本でも、秋田とか高知にはまだ闘鶏の文化は残っていたような気がする。
マーケットとあるので、日本のフリーマーケットみたいなのを想像するかもしれない。
ちょっと毛色は違うが、地元のフィリピン人の生活に根付いた数多くの商品が並んでいる。
とりあえず、写真を見てほしい。
食材、衣類、小物、家具、etc…。
現地で生活するのであれば、大抵のものはそろうのだろう。
問題はここから。
生魚もご覧のとおり、無造作に広げられている。
それも、日本人的感覚ではちょっと考えられない状態で。
並べられた生魚が、直射日光をもろに浴びているのだ。
お店の人も、たまに水をかけたり、ハエを追い払ったりするだけで、特にそれ以外のことはしていない。
僕はお腹が弱いくせに、東南アジアでもアフリカでも、現地の屋台料理など喜んで食べる方だ。
しかし…、さすがにこれは抵抗を覚える。
いや、そりゃ新鮮なんだろうけど、一歩間違えたら信じられないほどの破壊力の腹痛に襲われるんじゃないか?
大丈夫なのか?
同行したフィリピン人に聞いたら、特に問題ない、新鮮だよと言う。
そういうものなのか。
ちょっと感覚違うけど、日本人が神経質すぎるのかな。
しかし、ビーチ沿いという場所柄なのだろうか、魚屋の数は多い。
全体の3分の1くらいは魚屋という感じだ。
店の並びに特に規則性はない。
食材と同じように、衣類や家具なども売られている。
そして、店に挟まれた道路には、ひっきりなしに車やトライシクルが走っている。
荷台をよく見ると…、これは…ドナドナ状態?
マーケット内のにおいもすごいのだが、車に積まれた家畜の鳴き声も相まって、阿鼻叫喚の様相を呈している。
しばらく歩いていると、「ライブストック」と呼ばれる家畜の取引所に来た。
ドナドナの発信源はここか。
車に載せられた家畜達は、ここから運び出されている。
入場口で5ペソ(約10円)を支払う。
払った証として腕に何かハンコを押されたけど、何て書いてあるのかは全く読めない。
入った瞬間、というか正確には入る前から聞こえてくるのだが、売られていく豚や牛、ヤギの絶叫が響き渡っている。
耳をつんざくほどの悲痛な叫び声だ。
ここでは命の取引が行われているんだな、と嫌でも実感してしまう。
この雰囲気を言葉だけで表現するのはちょっと難しい。
まずは写真を見てほしい。
そのうえで、現場の雰囲気を更にリアルに感じたいという人は、動画を見てほしい。
日本の家畜取引がどんな状態で行われているのかは知らないが、これがフィリピンの現実だ。
僕らが普段口にしているお肉は、こうして取引され、解体され、お店を通して、我々の食卓に並ぶことになる。
普段口にしている料理は、まぎれもなくこういった一つ一つの命なのだ。
日本の子ども達にこれを見せるのは残酷か?
年齢にもよるだろうが、僕個人としては、ある程度物の分別が分かる年齢なのであれば、こういった現実を見せることは子どもにとって有害ではないと思う。
今の子ども達は、調理された状態の肉か、スーパーで売られている肉しか見たことがないだろう。
自分が食べているのが、他の動物達の「命」なんだという認識は普段もってないと思う。
流石に解体しているところを見せるのは刺激が強すぎると思うけど、僕らが食べているお肉は、こうやって市場で取引されるところから始まっているのだ、という認識をしっかりと持つのは必要なことなんじゃないだろうか。
自分が生きるために食べる、というのは、他の動物達の命の上に成り立っていることなのだ。
と、自戒を込めて僕は思う。
ひとしきりマーケットを歩くと、海岸に出る。
ここからはアポ島への船が出ている。
ダイビングなどで有名なアポ島へ向かうときは、ここから出る船に乗っていく。
近くで売っているレチョン。
フィリピン人の大好物の豚料理(というか豚の丸焼き)だ。
マラタパイ・マーケット。
生活用品だけでなく、たくさんの命がやり取りされている場所。
やはり、現代の日本ではすっかり失われてしまった世界がフィリピンには残っている。
好みは分かれるかもしれないが、ネグロスに来たら絶対に訪れた方が良いと自信をもっておすすめできるマーケットだ。