保育園問題 男性の育休

【夫婦同時育休】保育園退園関係の審査請求結果について【退園処分】

…なんだか難しいタイトルで申し訳ない。

以前、このブログで「夫婦で同時に育休をとったら、保育園に通っている上の子が退園となってしまった」という話を書いたのを覚えておられるでしょうか?

というか、そもそも育休きっかけで始めたブログなんですが、これ。

次女も4歳とすっかり大きくなりました。

簡単にご説明すると、

第3子誕生」→「最後の出産となるので、夫婦で同時に育休取得」→「区の規定で現在通園中の姉は退園処分、自宅で面倒みるか、幼稚園or子ども園に行かせてね」→「うちは一年間の育休だから仕方ないけど、状況や期間の長短かかわらず同時に育休とったら「保育の必要なし」で即退園は行き過ぎじゃないか?」→区へ不服申立て(審査請求

という出来事があったんです、ざっくり書くとね。

僕ら夫婦は丸々一年間の育休をとったので、上の子が退園処分となるのは、まあ…納得はしていないけど、仕方ない。

「保育の必要性がない」のは生まれてきた赤ちゃんの話であって、現在通園中の子どもの問題じゃないと思うけど、それが区の決まりなら仕方ない。

 

でも、仮に一ヶ月程度の育休であっても、夫婦が同時にとっただけで通園中の兄弟が退園になってしまうのは著しくバランスを欠くと思うし、もっと状況を良くするためにこの規定を変えていくべきだと思う。

だから「一言言わせてよね」ということで、僕ら夫婦は生まれて初めて行政へ不服申立て(審査請求)をしたわけです。

あれからかれこれ4年近く経ち、もちろん結果はとっくに出ていたのですが、「まあ別に読みたい人もいないだろう」とその後の経過も書かずに放置しておりました。

ところが先日、このブログを開始してから初めてコメントをいただきまして… 「その後、結果はどうなりましたか?」と嬉しくもありがたいお問い合わせが。

なので、当時を思い出し、資料を参照しながら速攻で書き上げました。

順を追って書いていきますので、これからご夫婦で育休を取ろうとしていらっしゃる方の参考になれば幸いです。

手続き全体の流れ

では、受領した文書を添付しながら、流れを説明しておきます。

お役所関係の固い文章を読むのに抵抗がなく、僕の主観が入った文章を読むよりまず先に一次資料に当たりたいという方は、このままお読みください(UPした各書類は、全て僕らに送付された原本をスキャンし、個人や場所の特定に繋がる部分だけ僕が黒塗りしたものです)。

この量の資料を読むのはさすがにしんどい、まずは結論を知りたいという方はこちらからご覧ください。

審査請求書提出〜審理員の選定

僕らが提出した「審査請求」は、区に受理された後、それを審理する「審理員」という方が区長に選出されてスタートします。

審理員が選出された後は、処分庁(区)から弁明書というものが審理員に提出されます。

要は「区の職員の行った判断と行為は違法でも不当でもなく、区の規則に従った妥当な対応ですよ」という主張が区から審理員にされるわけです。

これを受領した審理員は、審査請求人である僕らに「区からこのような弁明書が出されています。反論や証拠はありませんか?」というお伺いを立ててきます。

もちろん、ちゃんと反論はさせていただきました。

が、これは写しを控えておくのを忘れてしまったので手元にありません、すみません。

僕らの書いた内容は、後述する意見書等にそのまま引用されているので、気になる方は読み込んでみてください。

審理員から意見書の提出

それらの弁明書と反論書を審理員が受領・検討した後は、審理員が意見書という形にして審査庁(この場合は区長)に提出することになります。

審査長から行政不服審査会へ諮問

そして、意見書を受領した審査庁は、今度は区の行政不服審査会(有識者からなる第三者機関)というところに諮問します。

その際は、審理員の時と同じように、審査請求人として何か主張することはないか、書類提出の機会が与えられます。

区の行政不服審査会は、意見書の内容を審議・検討して、「答申書」という結論にまとめて、審査長である区長に提出します。

答申〜審査庁の最終判断へ

最終的には、この結果(答申)を踏まえて審査庁である区長の決定が下され、裁決書という書類となって審査請求人の下へ審査結果が還るという流れになるのですね。

このように、入念な手続きを経て、僕らの審査請求は審理されました。

きちんと反論の機会は与えられたし、行政の方々は法律に則ってしっかりと検討してくださったと思います。

それについては、僕ら夫婦は非常に感謝しております。

ただ、区民からの異議申立てに対して十分な手続きを踏んでくださるのはありがたいのですが…結果出るのにかなりの時間がかかったなぁというのも、僕らの率直な感想でした。

手続き上、仕方がないとはいえ…もし切羽詰まった時間の余裕のない状態であるなら、この制度を利用することはなかったでしょうね。

内容の検討

以上の流れを踏まえた上で、それぞれの内容を見ていきましょう。

前回の記事では、平成29年6月13日付けで審理員が選ばれたというところまで書きました。

審理員は区の総務部政策法務担当課長さんですが、区が提出した弁明書と僕らが提出した反論書をベースに、意見書を作成してくれています。

では、その内容はどうなっているのでしょう。

意見書の内容

意見書の内容を箇条書きにするとこんな感じです。

ポイント

  • 退園届は職員の説明を受けて、納得した上で自分の意思で書いて提出したものですよね。
  • 特別な事情(①次年度は小学校入学とか、子どもの発達に留意する必要があるとき②保護者の健康状態や子どもの発達上環境の変化が好ましくないと考えられるとき)があれば継続して保育の必要性が認められなくもないけど、おたくはそういう事情もないですね。
  • 待機児童の有無は、あなた方の子どもの保育の必要性の問題とは無関係。
  • 審査請求人の主張するような事情があったとしても、それはこの処分の結果事実上生じるものに過ぎないので、保育の必要性とは無関係。
  • 現在の区の運用は育休取得を検討している男性の意欲を妨げ、厚労省の取組と矛盾すると審査請求人は主張するけど、誰がいつ育休を取得するか区は関与していないし、実際、審査請求人は育休とっているじゃないですか。
  • 退園による生活環境の変化が児童の精神の発育に影響を及ぼすというけど、保育所以外の生活環境が悪い訳ではないし、仮に影響があったとしても退園が原因であるとは言えないですよね。
  • そもそもこれって区の保育行政への意見または要望の類であって、この処分は違法でも不当でもなんでもない。

簡単にまとめると、「区は現行の規定とおりにちゃんとやってますよ、違法なことや不当なことは何もないですよ、あなた方の請求は単なる要望ですよ」という内容ですね。

うん、僕らも区の決定が違法だとは思ってないんで、そこは争うつもりないんです。

区の職員さんは、規定に則ってちゃんとやって下さっていたと思います。

でも、今の「夫婦で育休とったら即退園」という規定は「弟or妹が生まれたばかりの夫婦」にはちょいと厳しいと感じたから申し上げているんです。

こちらのやり方が悪いんですけど、言葉遊びみたいというか、議論が噛み合ってないですね。

答申書の内容

では、それを受けた区の行政不服審査会の判断はどうでしょう?

ちなみに行政不服審査会は3人のメンバーで構成されており、それぞれのお名前をググったら会長は弁護士さん、残りの御二方は大学教授と弁護士さんでした。

内容は以下のとおり。

ポイント

  • 我々の判断も審理員の意見とおんなじ。
  • 区は夫婦同時育休が退園になるという現行規定の説明をちゃんとしているし、そこに審査請求人の錯誤はない。
  • 区の対応は現行規定とおりで、違法または不当なものではない。よって、この審査請求は棄却するべきである。

行政不服委員会の意見および判断も、審理員と全く同じでした。

ここまで読んで下さった方はお分かりになると思いますが、審理員も行政不服審査会の方も、この退園処分が「違法か不当か」という視点で判断されています。

なので、当然最終的な結論も…。

裁決書の内容

最終的な結論も以下のとおりです。

ポイント

  • 行政不服審査会の意見・判断とおんなじ。

はい、記載内容に違う部分を発見するのが難しかったくらい、全く同じ結論でした。

まあ、そうなるよね。

まとめ

こうして、約半年間かかった僕らの審査請求は、長い時間と手間をかけた結果、「違法でも不当でもないですよ、あなた方の主張はただの要望です」という何とも噛み合わない形で終わりました。

そりゃ違法かって言われたら、区の職員さんは現行規定とおりに粛々とやっているわけで、全然違法じゃあないです。

私達の「要望」というのも仰るとおりで、そもそも審査請求書にも「違法」という言葉は使っておらず、「適切ではない」と書いています。

ただ、違法ではないけれども、区民の現実を知って欲しかったし、育休取得率を上げるならぜひ区に考えてみて欲しい問題でした。

 

…とはいえ。

区の職員の皆さま、余計な仕事を増やしてすみません。

区民の皆さま、こんな形で税金使っちゃってすみません。

誤解のないように一つだけご理解いただきたいのですが、僕らは別に区に嫌がらせしたい訳じゃなかったんです。

「今の規定を厳格に運用していると実際の家庭にはこんな不都合が生じますよ」という、僕らの現実と意見を区と区長に届けたかっただけなんです。

届かなかったけど。

 

このブログを読んでる人の中には「やり方が悪い、そもそも行政への審査請求の趣旨が分かってない」と思われる方もいらっしゃると思いますが…ごめんなさい、当時の僕らにはこれが精一杯でした。

育休って、仕事をお休みしているってだけで、色々やろうと思ったらあっという間に時間なくなるもんなんです、ホントに。

 

…しかし、こういうのって、今後の区政に向けて審査内容と結果の蓄積とかされないんですかね。

僕がかつて公的機関にいたときは、審査請求や再審査の内容をデータとして蓄積して、「結果はこうだったけど、請求人の言っていることも理解できる部分があるから、今後こう変えていくべきではないか」と執行部に提案したりしたんだけど(実際、それで規程変わったこともあるしね)。

自治体レベルだと難しいのかな。

区の現状は?

さて、結果が出てから約4年の月日が流れましたが、現在の区の現状はどのようになっているでしょうか。

ちょっと気になったので、区のWebサイトで調べてみました。

令和3年度保育施設利用のご案内54頁より。

・・・。

・・・若干、記載内容は変わりましたが、やはり基本的には変わっていないようです。

出産後のママのケアをするなら、ママの産休中の期間だけ、パパが育休とりなさい。

重なったらダメだよ、それは即退園!

上の子を保育園に預けておきたいなら、ママが育休とってパパはいつも通り仕事に出るか、パパが育休とってママは職場復帰しなさい、ということですね。

 

・・・そんなに夫婦同時育休って贅沢でいけないことなんですかね。

 

ちなみに、この「育休期間がパパママで重なったら即退園」というのは誇張でもなんでもなくて、わずか1週間でも被ったら本当に退園となります。

僕らが育休をとった後、実際に妻の友人夫婦が育休を申請しようとしたところ、区の職員から「旦那さんと奥様で育休期間が1週間重なっています。これだと現在通園中のお子さんが退園となります。規定上は1日でも被ったら退園です」という通告を受けました。

旦那さんは、勤務先の職場の「育休取得率を上げよう」という取組みに賛同して育休をとろうとしたのですが、この「1週間どころか、1日でも重なったら退園になりますよ」という区の職員の言葉に驚いて、慌てて育休ではなく1週間の有給休暇に切り替えたとのこと。

やっぱり男性の育休取得率向上には心理的な障害となりますよね。

一度退園になったら、そう簡単に復園なんてできませんから。

 

<2022年1月追記>

令和3年度まで上記のとおりでしたが、令和4年度から変更になりました!

詳しくは以下の記事をご覧ください。

参考記事
【夫婦同時育休】区の制度が変わりました!【即退園ではなくなった】

続きを見る

次の一手を考えよう

さて、ここまでやってみて分かったこと。

僕らのとった方法では、現状を変えていくことは極めて難しい、というか不可能。

何か別のアプローチをする必要があるというのは、はっきり理解できました。

 

既に育休も終わってるし、今更何かする予定あるの、まさか第4子でも考えてまた育休とる予定なの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、さすがに僕ら夫婦にそこまでの余裕はないです(笑)。

でも、夫婦同時にとった育休はかけがえのない時間だったし、一生のうちに一度くらい、家族とひたすら一緒に過ごす期間があってもいいとは今でも思っています。

人それぞれ色んな事情があるから万人にオススメすることはできないけど、子どもが生まれることによって価値観や人生観が変わる、そういったことに真正面から深く向き合える素晴らしい機会だったわけですよ、僕らにとって夫婦同時育休とは。

だから、少しでも興味のある人には前向きに検討してほしい。

 

そして、そのための活動を経験者である僕らは続けていこうと思います。

実際、この国の保育や児童教育の問題があまり改善されないのは、時間的な制限がある(要は、我が子が当事者である期間を卒業したら他人事になってしまう)からだと感じるので、誰かが動き続けないとずっと変わらないと思いますし。

 

…働きかけるとしたら、今度は区議会議員さんとかになるんですかね。

政治的な活動ってやったことありませんが、やれる範囲でやっていきます。

また何かご報告できる日が来ますように!

3人ともすくすく成長してます!

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