留学生活が始まって、最初の日曜日。
すっかり体調が良くなり、じっとしていられなくなった長女を連れて、僕ら家族が向かったのはアポ島という島だ。
アポ島。
事前に妻から話だけは聞いていた。
何でも、ウミガメと一緒に泳げるとのこと。
「見られるだけじゃないよ?一緒に泳げるんだよ?沖縄でも小笠原でも、一緒に泳いではいないでしょ?絶対に行くべき!」と妻に強烈にプレゼンされた。
しかし、聞けばアポ島までは小舟で一時間以上かかるらしい。
もちろん、小舟だから相当揺れるらしい。
というか、過去に船が沈没して亡くなった人もいるらしい。
…う~ん。
大丈夫かなぁ。
元気になったとはいえ、長女は病み上がりだ。
しかも、タイミング悪く、台風が近づいていて海が相当荒れている。
長男は船はおろか、タクシーやバスでもゲロるくらい乗り物酔いするぞ?
パパだって台風の小笠原丸で酷い船酔いした苦い思い出がある。
そんな心配もどこ吹く風、妻は僕から「じゃあ行ってみるか」という言葉を引き出すや否や、さっさと船の予約の手配をした。
前日の夜遅くなのに一体誰が予約受けてくれるんだ?と思ったら、同じ寮に留学しているナツキさんのツテで、ダイビングショップの五十嵐さんという方に頼めるという。
こういう時の妻の行動は本当に早い。
さて、翌日。
ダイビングショップのスタッフさんが、わざわざ僕らの滞在しているSPEAまで車で僕らをお迎えに来てくれた。
早速後ろに乗り込んで出発。
そして、シュノーケルセットを持参して、到着した僕らの目の前に登場した船。
沖の方にうっすらと見える船。
そこまでは手漕ぎボートに乗って行くとのこと。
…えーと。
1歳の赤ん坊が一緒なんですが、大丈夫でしょうか。
死んじゃいませんか?
率直にそう感じ、ビビる僕と妻。
しかし、そんな僕らを尻目に、長男はザバザバと海に入り、小舟に乗り込んでいく。
いつもながら、こいつの行動力は誰に似たんだろう。
不安を覚えながら船に乗り込む我が家族。
やっぱりちょっと波が荒いなぁ、なんて感じながらスタートして20分も経っただろうか。
妻が逝った(ゲロった)。