僕らが滞在しているSPEAは、ドゥマゲテ中心街から少し離れた場所にある。
日本で田舎暮らしをした経験があれば何てことない光景なのだろうが、我が子達は都会以外に住んだことがない。
なので、映る景色のどれもが、新鮮そのもの。
犬が大好きで、2年前に愛犬を16歳の大往生で亡くした子ども達は、敷地内を走り回る犬の家族に大喜び。
「あー、でもちゃんと狂犬病の注射とかしてあるのかな…」と心配だった僕は、あまり触らないように言ったんだけど、大人しい子犬は早速長男に捕獲された。
…自分の生活にあった「ごく普通の自然」が消えてしまったのはいつだろう。
マンション暮らしになってからは、土に触れる機会もなくなった。
特に田舎育ちでもないが、人間である前に僕も生物なので、身近に自然がない生活というのは非常に窮屈だ。
都会生活は便利なのはいいんだけど、本当にこれでいいのかな、とどこか落ち着かない。
ましてや、子ども達の将来を考えると、日本に戻って今の生活を続けていくことに、どことなく不安を覚えてしまう。
一見快適に整備されているように見えるが、非常に脆く、他人に無関心な「都会」。
減り続ける人口と増え続ける高齢者という、将来確実にとてつもない負担が子ども達に覆い被さってくる「日本」。
そんな中で我が子を育てて、将来取り返しのつかないことにならないだろうか。
フィリピンは日本に比べると確実に不便だ。
しかし、ドゥマゲテで出会う人はみな陽気で明るく、人生を楽しんでいる。
日本では話題になる自殺も、日本人ほど多くはないだろう。
ここの人達は、日本の都会で仕事をしている人達より、貧しくてもはるかに人間らしく日常を楽しんで生きているように僕には見える。
どうやったら人生を楽しく、明るく笑って生きられるのかな。
実はこの答えは、自分の中である程度は出ているのだが、自分の理想を実行するためにはとてつもない決断と労力が必要だ。
自分の人生だけなら多分どうとでもなるが、妻も会社でのキャリアがあるし、日本に戻れば高齢の母も同居している。
子ども達のためだからこそ変えていきたいと思う反面、3人の生活と人生に直結することへの躊躇もある。
難しいなぁ。
育休をとる前は、ただ単に仕事と家事をしていれば、それでよかった。
しかし、育休に入ってからは自分を掘り下げ、子どもとの未来を真剣に考え続ける毎日。
それまでの生活を振り返り、今後の自分の人生や家族の将来についてひたすら向き合うという作業は地味にキツイ。
そう簡単に答えが出るわけもないし、仮に何かを決めて進むには背負うものが大きすぎる…。
ちょっと暗い話になってしまったので、今回はこの辺で。